ゼラチン、コラーゲンペプチド、植物エキス、茶葉パウダーなどの食品原料を海外から輸入する場合、品目が何であれ最初の手続きは同じです。業として食品や食品添加物を輸入する者は、食品衛生法に基づき、輸入申告に先立って「食品等輸入届出書」を通関地を所管する検疫所の食品監視窓口に提出します。この窓口は全国に32か所あります。
海外から食品原料を調達し、自社が輸入者となって国内で使用・販売する食品メーカーや商社にとって、実務上の関心は、どのような場合に命令検査の対象になるか、残留農薬や添加物の規制が原料そのものにどう適用されるか、そして業務用原料として仕入れる場合に表示義務がどこまで軽減されるか、という点です。以下は、厚生労働省・消費者庁などの公的機関と業界団体が公表している情報に基づいて整理したものです。
要点
- 食品等輸入届出書は、輸入申告に先立って検疫所に提出する。
- 業務用原料は一般消費者向け食品より表示義務が軽く、内容量表示や一括表示の枠は必須ではない。
- 牛由来のゼラチン・コラーゲンには、通常の食品規制に加えてBSE対策上の輸入制限が別途かかる。
食品原料の通関前に、何を届け出る必要があるか?
業として食品、食品添加物、器具、容器包装、一部の乳幼児用おもちゃを輸入する者は、輸入申告に先立って「食品等輸入届出書」を、通関地を所管する検疫所の食品監視窓口(全国32か所)に提出しなければなりません。検疫所は書面審査を行い、必要に応じて検査を実施して、有害物質の有無や食品衛生法の規格基準への適合を確認します(厚生労働省・輸入食品監視業務に関するFAQ)。
個人使用、展示、研究、装飾、社内検討のための少量サンプルはこの届出の対象外ですが、その一部でも一般消費者向けに販売・流通させる場合は届出が必要になります。サンプル出荷から商用発注に切り替わる場面で見落としやすい点です。
命令検査とモニタリング検査、実務上の違いは何か?
厚生労働省のFAQは、命令検査とモニタリング検査を次のように区別しています。命令検査は、法違反の可能性が高いと判断された食品が対象で、輸入の都度検査を受け、費用は輸入者負担で、結果が判明するまで輸入は認められません。モニタリング検査は食品ごとのリスクに応じた計画的な抽出検査で、費用は国が負担し、結果が判明する前でも輸入できます(厚生労働省・輸入食品監視業務に関するFAQ)。
| 検査の種類 | 対象となる条件 | 費用負担 | 結果判明前に輸入できるか |
|---|---|---|---|
| 命令検査 | 法違反の可能性が高い食品 | 輸入者 | できない(結果待ち) |
| モニタリング検査 | リスクに応じた計画的抽出検査 | 国 | できる(先行輸入可) |
ポジティブリスト制度と添加物規制は具体的に何を制限しているか?
残留農薬のポジティブリスト制度では、2006年5月29日の施行以降、個別の残留基準が設定されていない農薬について、食品1kgあたり0.01mg(0.01ppm)の一律基準が適用されています。根拠は食品衛生法です。個別基準のない農薬については、植物由来の原料もこの一律基準で判定されます。茶葉での運用例はTerra Vistaのポジティブリストと茶葉コンプライアンスガイドにまとめています。
原料に使用する食品添加物(植物由来の着色料や香料など)は、指定添加物名簿または既存添加物名簿に掲載されているものに限られ、未収載の物質は輸入も販売も認められていません。指定添加物は2019年3月31日時点で455品目、2011年5月末時点では413品目でした。2026年時点の品目数は本稿の出典では確認できていないため、個別の物質が収載されているかどうかは、取扱いの検疫所に確認するのが確実です。
既存添加物としては別途およそ365品目が収載されています(品目数の取得時点は出典に明記がありません)。これは1995年(平成7年)の法改正より前から日本国内で長年使用されてきた天然添加物で、新規添加物に課される指定審査を免除されているものです。
合成樹脂製の容器包装で原料を輸送する場合は、容器包装側の規制も関わります。食品用合成樹脂器具・容器包装のポジティブリスト制度は、5年間の経過措置を経て2025年6月1日から完全施行されています(消費者庁・食品用器具容器包装のポジティブリスト制度)。
業務用原料として仕入れる食品は、一般消費者向け食品と同じ表示が必要か?
必要ありません。食品表示基準は、消費者に販売する形態で包装されていない業務用加工食品について、表示事項そのものは一般消費者向けと同じ内容を求めつつ、一括表示の枠に収める必要はなく、内容量の表示も義務としていません。これらは容器包装のほか、送り状、納品書、規格書に記載することもできます。
輸入者が表示を行う場合、「製造者・加工者・輸入者」の欄は「輸入者」とし、輸入者の名称と営業所の所在地を記載します。国内での表示内容に責任を負うのは輸入者です。業務用の軽減措置で変わるのは表示の形式と記載場所で、この責任は輸入者に残ります。
ゼラチン・コラーゲン・コラーゲンペプチドには追加の輸入規制があるか?
牛由来のものにはあります。通常の食品規制に加えて、BSE(牛海綿状脳症)対策の一環として、牛の皮・骨を原料とするゼラチン・コラーゲン、およびそれらを含む食品は、BSE発生国・発生地域からの輸入が禁止されています。厚生労働省は2013年に検査対象月齢や特定危険部位の範囲を見直していますが、現行の例外条件(対象国・地域、月齢、部位)は本稿の出典では確認できていないため、牛由来原料の調達前に、受け入れ側の検疫所へ直接確認する必要があります。
輸入実務上のポイントは、業界団体が次のように説明しています。原料は現地の食肉生産基準に沿って管理された動物までトレースできること、最終製品は乾燥濃縮製剤であるため濃縮倍率(おおむね3~5倍)に応じて残留農薬の基準値を換算すること、ゼラチン・コラーゲンは水洗と酸・アルカリ処理を経て脂質含有量が約0.3%と低く、油溶性農薬の残留リスクが低いことなどです(日本ゼラチン・コラーゲン工業組合)。
植物エキスは食品と添加物のどちらに区分されるか?
区分は用途で決まります。食品衛生法は食品添加物を、食品の製造過程で、または食品の加工・保存の目的で添加・混和・浸潤させる物質と定義しています。植物エキスを着色や香り付けの目的で使用する場合は食品添加物に当たり、指定添加物名簿または既存添加物名簿に収載されている必要があります。添加物としての機能を持たず、単なる原料として使用する場合は、通常の食品として扱われます。いずれの区分であっても、業として輸入する場合は、原材料や製造工程に関する説明書を添えて、同じ食品等輸入届出書を検疫所に提出します。
どこから始めるか:食品輸入チェックシート
Terra Vista株式会社は日本法人として、食品原料の輸入者を引き受け、輸入届出の準備、業務用原料に合った表示形式の整理、上記のポジティブリスト基準との照合を行います。最初のご依頼として用意するのが食品輸入チェックシートです。その原料に必要な届出、想定される検査区分、業務用表示に記載する内容を、5営業日以内にまとめて回答します。
ポジティブリストの茶葉での運用例はTerra Vistaのポジティブリストと茶葉コンプライアンスガイドに、輸入者としての立場そのものは日本における輸入者(Importer of Record)の整理に、食品以外を含めた日本市場参入の進め方全体は合規ルートを決める6つの質問と越境コンプライアンスと日本市場参入にまとめています。
まず確認すべき公式情報源
- 厚生労働省・輸入食品監視業務に関するFAQ:届出の要件、全国32か所の窓口、2つの検査区分。
- 厚生労働省・ポジティブリスト制度(残留農薬):2006年5月29日の施行日と0.01ppmの一律基準。
- 厚生労働省・指定添加物に関する参考資料。
- 消費者庁・食品用器具容器包装のポジティブリスト制度。
- 日本ゼラチン・コラーゲン工業組合:ゼラチン・コラーゲンの輸入対応に関する説明。
よくある質問
少量の食品原料サンプルにも輸入届出は必要か?
個人使用、展示、研究、装飾、社内検討のための少量サンプルであれば不要です。ただし、その一部でも一般消費者向けに販売・流通させる場合は届出が必要になるため、サンプル出荷から商用発注に切り替わる場面は注意が必要です。
命令検査とモニタリング検査の実務上の違いは何か?
命令検査は法違反の可能性が高い食品が対象で、輸入の都度検査を受け、費用は輸入者負担で、結果判明まで輸入は認められません。モニタリング検査はリスクに応じた計画的な抽出検査で、費用は国が負担し、結果判明前でも輸入できます。
業務用として仕入れる食品原料は、一般消費者向け食品と同じ表示が必要か?
必要ありません。業務用加工食品は、表示事項そのものは一般消費者向けと同じ内容が求められますが、一括表示の枠に収める必要はなく、内容量の表示も義務ではありません。これらは容器包装のほか、送り状、納品書、規格書に記載することもできます。
牛由来のゼラチン・コラーゲンに追加の規制はあるか?
あります。BSE対策の一環として、BSE発生国・発生地域からの牛由来ゼラチン・コラーゲンの輸入は禁止されています。現行の例外条件(対象国・地域、月齢、部位)は本稿の出典では確認できていないため、受け入れ側の検疫所へ直接確認する必要があります。
植物エキスは食品と添加物のどちらに区分されるか?
用途で決まります。着色や香り付けの目的で使用する場合は食品添加物に当たり、指定添加物名簿または既存添加物名簿に収載されている必要があります。添加物としての機能を持たず、単なる原料として使用する場合は、通常の食品として扱われます。
関連ページ
関連リンク:日本のポジティブリストと茶葉コンプライアンスガイド、日本における輸入者(Importer of Record)の整理、合規ルートを決める6つの質問、越境コンプライアンスと日本市場参入、Terra Vistaのサプライチェーン・調達ページ、Terra Vistaお問い合わせページです。
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